━━━午後12時40分。


お昼休み開始のチャイムが鳴ったと同時に、わたし花町糸羽は教室を出た。


季節はまだ夏の暑さが残る秋。

最近ようやく長かった夏休みが終わったばかり。


高校1年のときは、長い夏休みがとても嬉しかったけれど、今年は違った。


……だって、会いたい人に会うことができないから。



小走りで息を切らしながら、階段を最上階まで上る。


全ての階段を上りきると、人なんて誰もいない。


走ったせいで汗がジワリと出てきて、ブラウスにピタッとはりつく感覚が気持ち悪い。

それに加えて、ここの階は普段使っている教室がある階より倍くらい暑い。


長い一直線の廊下を歩いて、1番奥の角の部屋。



ここに、わたしの会いたい人がいる。