「おい。固まってないでこっち来い」


近藤先輩が、恐怖で硬直しているあたしの肘を掴んで引っ張り、折原先輩のロックオンから遠ざけてくれた。


そのままふたりでゆっくりとこの場から離れ、そっと生徒会室から出てドアを閉めて、ようやくホッとした。


はあぁ、怖かったー!


今にも折原先輩の頭のてっぺんに第二の口がパカッと開いて、丸飲みされるかと思った!


胸に手を当てて深呼吸していると、近藤先輩があたしに謝罪してきた。


「驚かせて済まなかった。ケガはなかったか?」


「あ、はい。大丈夫です」


とりあえず、体の方は大丈夫。心の方は猛烈に動揺してますが。


「折原のやつを許してやってくれ。さっきはちょっと理性をなくしただけで、あいつに悪気はないんだ」


あれで悪気があっちゃ余計にたまらない。とは思ったけど、口には出さなかった。


あたしだって、伊勢谷先輩が目の前で女の子を抱きしめていたらショックだもの。


だからって折りたたみイスをぶん投げようとは思わないけど。


「もうすぐ昼休みも終わる。とりあえずお前はこのまま教室に戻れ」


そう言って近藤先輩がエレベーターの場所までついて来て、ボタンを押してくれた。


「俺は生徒会室へ戻る。ヒスった折原の相手は司ひとりじゃ荷が重いからな。ひとりで教室まで戻れるか?」


「はい。もちろん」


「大騒動だったけど、司の弁当係になれてよかったな」