「ごめん……なさい……」


消え入りそうな声で、そう言う以外になかった。


こんなことをしでかしておいて、『ごめんなさい』なんて、小さな子どもでも言えるようなことしか言えない自分が情けなさすぎる。


近藤先輩はあたしの謝罪になんの反応もせず、なにも答えない。やがてこっちを見もせずにドアに向って歩き出し、調理室から出て行ってしまった。


怒鳴りつけられなかったのは、せめてもの先輩の理性と、あたしへの最後の思い遣り。


そう。これが最後だろう。


あたしはもう二度と近藤先輩に顔向けできない。


もう、二度と会えない。


そう思ったら急に涙があふれてきて、雨粒みたいに両頬を伝った。


自分への嫌悪感とか、先輩たちへの罪悪感とか、すべてをひっくるめた絶望感とか、あらゆる負の感情がどしゃ降りのように襲ってくる。


地の底に叩きつけられたような気持ちで洟をすすりながら泣いていたら、ふと、流し台の水音に気がついた。


振り返ると真央ちゃんが洗い物をしてくれている。