夜になった。
平良が来ることを予想して、宿題をスタンバイさせておく。

ドアが開いた。

「こんばんはー。」

平良の声が響く。
いつも通り来てくれた。
よかった。

こっちに近づいてくる。

「ん?どうした?ニヤニヤして。」
「え、ニヤニヤしてた?」

頬に手を当てる。
顔に出てたなんて。

「なんでもないよ。」
「ふーん。沙和はもうご飯食べたの?」
「これから。」

平良は、「ふーん」という顔をする。

定食があっという間に運ばれてきた。

平良は気持ちいいくらいにしっかり食べる。
そして毎日「うまっ」と驚く。
毎日ほぼ同じようなものを食べてるのに。

「夏休みもあっという間だな。」
「そうだね。私夏期講習しか予定なかったよ。」

べつに深い意味はなかった。

「ごめん。」
「え?」
「いや、この間ドタキャンしたの申し訳なかったなと思って。」

全然いいのに。
まだ、そんな風に思ってたんだ。

「ううん、全然気にしてないよ。仕方ないことだし。」

私は明るく言う。

「観たかったよな。」

え?

「上映中に観に行こうな。」

あ、そっち?
平良、本当にあの映画観たいんだ。

その時スマホのバイブが鳴った。
画面がパッとつく。

田尻くんからだ。

「遅くなった、ごめん!今日体調崩しててさっきまで…」という文面まで表示された。

まずい。

なんとなくハッと平良の顔を見てしまった。

平良もスマホの画面を見たようだ。