夕食が済む頃には外はもう暗闇に満ちていた。

都会でもなく田舎とも言えない、中途半端な街並みの、そこから少しかけ離れた住宅地の一辺にあるごく普通のアパートのごく普通の一室。ここが私の居場所であった。

誰にも邪魔されない。束縛なども微塵もなく、気の向くまま自由奔放に生きられる。社会のしがらみに眉間にしわを寄せることもなく、私は私としての個を主張出来るただ一つの大切な空間。


だけど、真夜中は容赦なく今日もやってくるのだ。


私は真夜中が来る前に風呂に入ることにした。湯加減は少し温め(ぬるめ)にした。

普段より長湯となった私は、僅かにのぼせ
を感じながらも冷房の効いた部屋に戻った。裸のままだが体の火照りはすぐには治まりそうにも無い。

冷房の風量を最大にし、その下に仁王立ちになる。冷えたかなと思って冷房の下から離れると、すぐにまた汗が噴き出してくる。それを幾度か繰り返してるうちに少々の体力を消耗してしまう。

そうこうしているうちにも冷酷にも時は進む。

もうすぐ真夜中だ。恐怖がまたやってくる。

私はタオルケットに身をくるませて寝入るのを待った。

時折、タオルケットに隙間を作っては時計を見る。

「真夜中だ」

私は身震いした。そして、もっそりと起き出すとヤカンに水を注ぎガスレンジに掛けた。

お湯が沸騰する音がし始めた。私はおもむろにフィルム剥がし、ビリッと蓋を半分ほどめくった。

お湯が沸いたようだ。

私は三分間だけ沈黙した。静かだった。

三分後、私は幸せの中にいた。いつものように満足感に包まれていた。そして私はゆっくりと闇に纏われていく。

朝が来て目が覚める。

最初に来たのは後悔だった。

私は頭までタオルケット被ってヒザを丸めた。涙が自然と頬をつたう。

真夜中さえ来なければ、私はこんなに苦しむこともないのに。

真夜中なんてなければ、私は悲しむことも何もない。

だから私は、食欲が増す真夜中が大嫌いだ。