**

「もう、ほんとなんなのよ」

真鍋さんから話をきいたとき、自分はなんてことをいっちゃったんだろうっていう後悔が募った。


――「葵だって一番好きだった人を事故で亡くしてるんだ。痛みも、つらさも、知ってる。葵はそういうことも全部乗り越えて、今ああやって笑ってるんだよ」


屋上で話しとき、勇也くんはこういった。

でも、それが自分のお兄ちゃんだなんて一言もいわなかった。


痛みもつらさも知ってる、なんて。

そんなの勇也くんが一番そうじゃないか。

事故でお母さんとお兄ちゃんを亡くして。


それなのに、わたしなんていった?

「わたしもう生きてるのがつらい」

なんて残酷な言葉。


それを聞いた時の勇也くんの狼狽えた姿。

その意味が今ではわかる。