「っ…」


チュッとリップ音を立てて、一度唇が離れたと思うとまた近づいてきた。



「ちょっと待って?!」

「なんですか?」

「なんで、キス…するの?」

「は?先輩はバカなんですか?」


え……。

今バカって言った…?


「ここまでしてんだから、いい加減気付いて下さい」


そう言ったかと思うと、またあっけなく唇は奪われた。

次はすぐ離れなくて、どんどん深くなっていって、柚季くんに飲み込まれそう。

息をするのを忘れていて苦しくなって、助けを求めるとそっと離してくれた。


「先輩かわいい」


ちょっと今のはずるい…。

少し大人びた潤んだ瞳でそんなこと言わないで。


「先輩は俺のこと、かわいいって言いますけど、かわいいのは先輩の方ですから。ちゃんと自覚して下さい」


最後にそう付け加えて、柚季くんは私を開放してくれた。

後輩の柚季くんに、こんなにドキドキしたのは初めてだ。

そして柚季くんは何事もなかったかのように、元いた場所に戻ってパソコンで作業をし始めた。


い、今のはなんだったんだろう…。

呆然と柚季くんを見ていると、目があってしまう。


「なに?もう一回して欲しいの?」


なんて言うもんだからドキッとした。


「違う!いや、その、柚季くんってそんなキャラだっけ…?」

「こんなキャラですよ。他の先輩達には内緒にしておいて下さいね」


柚季くんは極上の作り笑顔でそう言った。






もう柚季くんのギャップについていけない。









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