夏祭りなんて最後に行ったのはいつだろう?

そりゃあ、神社は好きだけど。

お祭りって、あまり一人で行くものじゃない。

一匹狼よろしく淡々と中学時代を送っていた私には、友達と誘い合って行くなんてあるはずなかったから。

そんな私が今年は夏休みを思い切り楽しんでる。

まさか、彼氏ができるなんて。

まして、浴衣デートに出かけるなんて。


「諒くん」


待ち合わせ場所へ着くと、やっぱり彼は先に来て私を待っていてくれた。

本当いつも思うのだけど、この瞬間に見せてくれる彼の笑顔が大好きだ。

ずっとずっと会いたくて、やっと会えたみたいな、そんな表情。


「浴衣、着てきてくれたんだね」

「諒くんもね」


どちらからともなく自然に手をつないだ。

もちろん歩くときは、右側が彼で、私が左側。

駅から神社へつづく通りは賑々しい活気にあふれ、どこか懐かしい祭り囃子が遠く聞こえた。


「浴衣、やっぱり似合ってる。いつも可愛いけど今日はもう特別って感じだね」


諒くんは私を臆面もなく褒める。


「本当、すごい可愛い」

「あ、ありがと……」


こういうの、やっぱりまだ慣れない。

でも、私にはちょっと考えたことがあった。

ひとつは、嬉しい気持ちを素直に伝えようってこと。

だって、他の誰でもなく彼の言葉だもん。

客観的に(?)私が可愛いかどうかとか、気にしすぎるのはよそう、って。

せっかく彼が「可愛い」って言ってくれるのに、自分を卑下してばかりじゃね、って。

そして、もうひとつは――。


「諒くんも、よく似合ってる」


言ってもらってばかりじゃなくて、私もちゃんと言葉にして伝えるんだ。


「浴衣姿、とっても素敵だよ」


褒めることも褒められることも、まだ慣れない。

待ち合わせで待たれることにも慣れてない。

初めての恋は本当、不慣れなことばかり。

でも――すごく新鮮でドキドキする。