すきなひとの、すきなひと




元弥がみんなの前で梨由って呼ぶから、いつからかあたしは“永野”として認識されなくなった。



代わりに、“永野セツナ”が“永野”と認識されて。



みんな、あたしが永野だってことを忘れたかのように、永野と言えばセツナを思い出した。



そして……あたしの気持ちなんてさらさら知らないみんなは、永野セツナと元弥の恋の成功を、あたしじゃない“永野”の名前を出して祈っていた。



元弥も。大切そうに、愛おしそうに、“永野”を呼ぶのだ。



『名前呼びは、がっついてるように感じる?』



『…………そうかもね』



『じゃあ、みんなみたいに苗字で呼ばなくちゃ』



ねぇ、元弥。



あたしがなんで、すぐに答えられなかったかわかる?