嫌なことから目を背けたくて、彼女の声は耳に入れないようにと頑張ってみた。けれど、そんなことは無理なのだ。
どうしても、彼女になりたかった。
どうしても、すきなひとのすきなひとになりたかった。
だけど。
『応援してる』
元弥に言ったこの言葉も、本心だから。
幸せになってほしい。あたしのこれは、手のかかる昔からの付き合いのちょっぴり特別な男の子を弟扱いしてすきになってるだけ、だから。
ねぇ、そういうことにさせて。元弥。
教室で「梨由!」と大口開けて呼んだかと思えば、ニコニコ笑って「元気ないね」と安心させてきて。
「梨由!」とあたしを呼び止めて、「相談があるんだけど」なんて恥ずかしがりながら……恋愛相談を持ちかけてきて。
ねぇ、元弥。苦しいんだよ。だけど、それ以上にすきで――それ以上に、あなたに幸せになってもらいたいんだよ。



