すきなひとの、すきなひと








「梨由(りゆ)ー!ありがとう、お前がアドバイスくれたおかげで、永野と遊ぶ約束ができた!」



放課後。家までの帰り道。



お隣さんだから、長い時間話すことができる。いまはそれが、苦痛だ。



「梨由、ほんとにありがとう!」



バッと頭を下げて、それから上げて、ニシシと笑う元弥。ねぇ、元弥。ずるいよ。



「俺、いつも梨由に助けてもらってる……ありがとう!」



そんなバカ正直に喜ばないでよ。



あたしが悪い奴だって、疑わないの?



――疑ってよ。



「梨由、俺、お前のことめっちゃすきだわ!これからもよろしくな」



手を差し出される。握手だ。



ほんの数秒、お互いの体温がまじるだけ。



ほんの数秒も、お互いの想いは理解できない。



なんて、残酷なんだろう。