すきなひとの、すきなひと




「永野可愛いよな……。あーぁ、やっぱり可愛い子は、イケメンに取られちゃうのか」



男子の僻みの声が聞こえてくる。



「永野って、名前じゃ呼べない感じあるよね」



「それな」



名前。



その響きに、ズキンと痛みが走った。



「……永野と付き合いたかったなぁ」



「でもこの感じだと、豊見が付き合うかもなぁ」



……そうだね。幸せに、幸せに……。



なんだか、悲しくなってきた。切なくなってきた。



じわりと視界が滲んで、かと思ったら一瞬であふれて。



常に、満タンだった。だから、あふれたんだ。



その場から、逃げ出す。走る。



廊下を走っちゃってごめんなさい。



学校で泣いて、恥ずかしい。



元弥の隣をすり抜けるように通り過ぎると、彼は驚いたような顔をしていた。



さっきまでは、嬉しそうだったのにね。