さされた。

社長の言葉の意味がわからなかった。

さされた。

どういうことだろう?

「あの、さされたというのは?」

小さな声で質問すると。

「福王子君は、会社で同僚だったかな? ナイフで腹を刺されたんだよ」

「は?」

社長に向かって「は?」だなんて態度が悪かったかもしれない。

それでも、「は?」としか言いようがなかった。

「えーと…えーと…」

頭の中が混乱する。

何かの冗談じゃないかと思った。

でも、社長は真顔だ。

もし、その話が本当だとしたら。王子の個人情報をペラペラ喋っている社長ってどうなんだろうって思った。

「福王子君、あの雰囲気からじゃ想像つかないかもしれないけど。一応、大手で働いていてやり手のエースだったらしいよ」

穏やかな表情で言う社長を見て、更に混乱した。

「皆、それぞれ事情は抱えると思うけどね。僕は、福王子君に期待しているんだよ。だから、勝又さん」

「はい」

「福王子君の力になってあげてね」

にっこりと社長が笑って。「じゃあね」と言って会議室から出て言ってしまった。

残された、私と部長。

「勝又、この会議室。使っていいからちゃんと福王子と話せよ?」

「はい?」

「そうだな。17時くらいに、ここに集合にしよう。福王子には俺から言っておくから。2人でちゃんと話して…王子のことちゃんと説得しろよ」

「え…」