顔も見ないで言葉だけで交わしていた出かけるときの挨拶がやけに新鮮に思えて照れる理恵の頭を朝陽が撫でる。

「気を付けて」
理恵の付け加えた言葉に朝陽が微笑む。
「理恵も、気を付けて」

温かい余韻を残したまま二人は久しぶりに別々の時間を過ごした。



朝陽は出勤してからも、休憩時間ごとにメールをくれた。
体調を気遣ったり、きれいな空だったり、食べた昼食がおいしかったこと、そんな他愛もない内容のメールすら久しぶりだった。
理恵も返事を返す。

メールのやり取りをする間に理恵は朝陽に気づかれないよう、病院へ来ていた。