「俺、自分が不甲斐なかったんだ」
「?」
「理恵がこんなに体調が悪くなるまで気づけなかった。いや、気づいていたのになにもしてあげられなかった。」
「違う。これは私の体のせい。それに私が自己管理してなかったから」
理恵が体を離して朝陽を見ると朝陽は切なく微笑んでいた。
「それでもさ、俺は人の命を救う医者なんだよ。自分の大切な家族の命も守れずに、ほかの人の命とばかり向き合ってた自分に腹が立ったんだ。」
「私の病気は朝陽のせいじゃないし、避けられなかったよ」
理恵が真っ青な顔をしながら朝陽に必死に話しかける。
「理恵の性格は誰よりもわかってると思ってるんだ。だからこそ、倒れる前に俺が止めるべきだった。そうしていればこんな傷、つかなくて済んだのに。」
朝陽は理恵の右手をとった。
包帯でぐるぐるにまいてあるその手にそっと触れる。

きっとこのけがはあとが残るとわかっている。

朝陽は後悔ばかりがこみ上げて自分を責めていた。