「奥様は甲状腺機能低下症です。」
医師からの言葉に朝陽は両手を強く握りしめた。
「足のむくみや徐脈、眠気や意欲低下、頭痛や嘔吐、めまい、食欲不振等の自覚症状がこの数値からするとあったはずですよ?なにか症状でご主人は気づかれませんでしたか?」
医師の言葉がちくりと心につきささる。自分が医者なのにこんなに役に立たなかったのははじめてだ。
いままで何人もの命を救ってきた。

でも、一番大切な人を守れなくてなにやってんだ。

朝陽は自分を責め続けた。



「右手の傷は縫合しました。ご主人が外科のお医者様ですから抜糸や時期はお任せします。時期を見て受診するか、処置をお願いします。」
「はい」

朝陽は医師からの説明が終わると病室で眠る理恵の隣に座った。