「おはようございます」
「おはよう」
更衣室には先に出勤していた智子がいた。
「もう、見たわよ。今日もお熱いじゃない。」
「まぁね」
はにかむ理恵の頬をつんと智子がつつく。
「見せつけてくれるじゃない。」
「まぁね」
二人は親しい人にしか自分たちが一度離婚したこと、もう一度入籍したことを話していない。
病院でもほとんどの職員が二人のことを知らなかった。
「体調は?」
「すごくいい」
「そう。よかった。」
智子はそう言って先に更衣室を出た。

理恵は甲状腺の治療を継続している。以前よりも断然数値が落ち着き、体調もいい。
不妊治療はもうしていない。
どうにも、排卵誘発剤が体に合わず、理恵が治療を辞めることを決断した。
子供はもうあきらめようと決心していた理恵はその現実をすんなりと受け入れることができた。