理恵は医大で湊と一緒だった。医学部の湊と朝陽。看護科の理恵。サークルが同じで数人ンおグループで仲が良かった。湊は昔から頭がよくて要領もよかった。医者としてばりばりと働いていたのに、父の会社を継いだと聞いていた。
医者はやめてしまったと朝陽から聞いたことがある。

「それで、俺の奥さんが体調を崩していて、看護師兼家政婦として理恵を雇いたいんだ。」
かなり強引な話。でも湊には理恵が断らないとわかっているようだった。
やっぱり朝陽が裏でなにか絡んでいる・・・。
理恵はそんなことを考えながら、首を縦に振った。

「産婦人科でも勤務してたし、昔から料理うまかったもんな。」
「そうでもないけど・・・。」
「田舎料理が特にうまかったよ。」
「なにそれ。ほめてんの?」
「ほめてる。」
湊は理恵に遠慮がない。
昔からそういうところ、変わらないなと理恵がコーヒーを一口飲んだ。
すると湊が真剣な顔になる。
「病気のこと知ってる。でも、理恵は絶対に現場にいるべき人間だろ?子供が生まれたら仕事辞めてもらって構わない。もちろん、出産直後は妻も大変だろうから少しの間はフォローしてほしいけど。」
やっぱり朝陽だ。