幸せな結末

「9年。」
「・・・」
「9年頑張ってやっとやっと命を授かれた。」
「うん・・・」
「一度も私のお腹に宿ってくれなかった命が来てくれた。」
「うん」
理恵は高梨の背をさすり続ける。
「この2か月間は天にも昇るような幸せな気持ちだった。」
「うん」
「失ってしまったけど、その命には絶対に意味があったし、大切にしたい。」
「うん」
高梨が理恵の腕をつかんだ。
「今まで、ありがとうございました。こんな結果だけど私たち夫婦は和田さんに感謝しています。いつも笑顔で、こうして私の背中をさすってくれたり、泣き言を聞いてくれて・・」
「そんな。頑張ったのは高梨さんですよ。お二人だからここまでこれた。」
「夫と二人で、仲良く、生きていきます。失った赤ちゃんの命の分も。」
高梨は涙を流しながら微笑んだ。

理恵が出会ってきた患者には様々な人がいた。