警察も、本人の意志で出ていった可能性が高いと言っていた。きっと、積極的に探してはくれないだろう。
探偵ならそのうち、見つけられるかもしれない。だけど、タイムリミットがあまりに近い。
「希樹の言う通りです。羅良がこういう行動に出たということは、よっぽどの覚悟があったのだと。簡単に帰ってくるとは思えません」
裕ちゃんは炭酸水のキャップを開け、一口だけ飲んだ。
羅良は感覚で動く私と違い、何をするにも熟考し、慎重に準備をしてから、確実な手法で目的を達成する。
思いつきや衝動で家出をするような人間ではないので、今回のことも思いつめた結果なのだろう。
裕ちゃんが言う通り、「やっぱり家出やーめた」と言ってケロッと帰ってくる可能性は低い。
「帰ってこなかったら、式をキャンセルするしかないよね?」
花嫁がいなくては、どうしようもない。
「式場と招待客に連絡を取るなら、今すぐの方が……」
「キャンセルなんてできるわけないでしょう! 遠方のお客様たちは美容院やタクシー、ホテルの予約までしていらっしゃるのよ。衣装だって……」
母が悲鳴のような声で訴える。
そりゃあ、明日が本番だと思って準備をしているのはゲストたちも一緒であって、迷惑をかけてしまうのもわかるのだけど。



