「裕ちゃん……」
花嫁に置き去りにされた新郎が、ひとりきりで玄関前に立っている。
これは、羅良が見つからなかったということだろう。
おそるおそる玄関を開けると、俳優のような顔の姉のフィアンセは、後ろにいる両親に向かって頭を下げた。
「まだ羅良を見つけられないのですが、そちらはいかがでしょうか」
両親は無言で首を横に振る。
「そうですか。こちらも人を雇って探させているのですが、手がかりなしです。面目ない」
「いいえいいえ、裕典さんのせいではありません。全部うちの娘が……私の育て方が悪かったんですううううう」
うずくまって泣きだすお母さんをどけて、私は裕ちゃんを家の中に案内した。
いつもは母がお友達を呼んでホームパーティーをする部屋の大きなテーブル。そのお誕生日席に裕ちゃんを座らせる。
「もし羅良が明日まで戻らなかったらどうするか。それを話し合おう」
冷蔵庫から炭酸水のペットボトルを持ってきて、皆の席に置いた。まるで首脳会議が始まるかのようだ。
「そんな怖いこと言わないでちょうだいよ」
「だって、その可能性が高いじゃない」



