洗濯機のドアを開け、カゴに出来上がった洗濯物を入れる。
「ふーん。まあ、兄貴の戸籍謄本を取っちゃえば、一発でわかっちゃうけどね」
ぴたっと手が止まる。振り返ると、脱衣所の入口で健ちゃんが微笑んでいた。
「……好きにすれば」
こうなったら、羅良のふりを続けるしかない。
婚姻届けを出すタイミングを逃している、ただそれだけだ。それで突き通す。希樹として戸籍に載っているわけじゃないのだから。
「いいなあ。羅良ちゃんにはない、その冷たい視線。それ大好き」
「変態」
「そうかも。じゃあごちそうさま。また来るよ」
もう来なくていい!
怒鳴ってやりたい気持ちを、必死で押し込めた。
もういや、あの義弟。いったい何がしたいのかわからない。
それで、私の時間を邪魔してくるの、本当に許せない。
「裕ちゃん、私働きに出たいの」
夕食の時間に、切りだした。
帰ってきてお風呂に入ったばかりの裕ちゃんは、まだ全身から湯気が立ち昇っているよう。
「いきなりどうした?」
「じつは、かくかくしかじかで」
私は健ちゃんの連日訪問で疲弊しきっていることを、とうとう裕ちゃんにぶちまけてしまった。



