極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~


 次の日も、土日は外してまた月曜、火曜、健ちゃんはやってきた。

 やってくる時間はまちまちで、お昼のときもあれば、昼過ぎにやってきて、おやつを要求するときもある。自分で手土産を持ってきたことは、ない。

「ねえ健ちゃん。そんなにお仕事抜け出してたら、怒られない?」

「んーん、全然」

 愚問だった。

 水曜の昼下がり、私は拳を握りしめて耐える。

 社長の家族だからって、適当に仕事しやがって。裕ちゃんを見習ってほしいわ。

「そんなにうちに来て楽しい? 何をするわけでもないのに」

 仁王立ちで、ソファに転がる健ちゃんを見下ろす。テーブルの上には、食べたあとのお菓子の包み紙が皿の上に放置されている。

「うん、落ち着くんだ。希樹ちゃんと結婚したら、こんな感じなのかな~って妄想するだけで楽しい」

 しまりのない顔でへらりと笑う健ちゃんに、心の中で舌打ちする。

 私は絶対嫌だね、あんたみたいなやつと結婚するの。

「ねえ、いつまでこんなこと続けるの?」

 健ちゃんが上体を起こす。私は、聞こえなかったフリをし、運転完了アラームが鳴った洗濯機の方へ向かう。

「無視はよくないよー、希樹ちゃん」

「何度言えばわかるの。私は羅良です」