結局、健ちゃんは家に上がり込み、ソファにどっかり座り、お昼ご飯を要求し、食べたら昼寝をして帰っていった。

「お前は家主かよ! 本当の家主より家にいる時間長いんじゃないのか?」

 健ちゃんが汚していった食器を食洗器に入れ、ボタンを押す。

 彼は特に身代わり結婚についての真相を聞きたがるわけでもなく、私を脅迫するでもなく、ただうちで休憩していっただけに見える。

「本当に迷惑……」

 何も用件を切り出さないくせに、私が少しでも帰ってほしそうな雰囲気を出すと、「そういえば希樹ちゃんさあ」と、わざわざ私の本名を呼んでくる。

「すごく無駄な時間を過ごした」

 時計を見れば、もう三時。

 あの仕事おさぼりマンに、半日持っていかれた。

 イライラしながら、夕食の準備にとりかかる。

 裕ちゃんの美味しそうに食べてくれる姿だけを想像し、手を動かした。