あらかた料理を食べ終え、義両親が新居の中を見て回っている間に、健ちゃんに聞かれた。
「そういえば、希樹ちゃんは元気?」
健ちゃんは新居にはあまり興味がないらしく、テレビの前のソファにどっかり座っている。
放ったらかしにしておくわけにもいかないので、私が一緒に待機しているというわけ。
「ほら、結婚式にも来てなかっただろ。久しぶりに会えると思ってたのにさ」
裕ちゃんは羅良と付き合っていたから、たまに実家にも来ていた。でも健ちゃんは個人的接点がなく、かなり久しぶりに。
たまに家どうしで集まったり、大勢が集まるパーティーにも、健ちゃんはあまり現れなかった。友達と遊ぶのに忙しかったらしい。
「希樹は……リフレッシュ休暇でとある田舎町にいるよ。ちょっと疲れちゃったみたいでね。鬱っぽくなっちゃって」
職場を休んでいる言い訳と同じことを話すと、健ちゃんは驚いたように目を見張った。
「え、嘘だろ。あの希樹ちゃんが? いっつも明るくて、鬱とは無縁ぽかったのに」
そうなのよ。私が鬱になんてなるわけないのよ。
なんてうなずくわけにはいかないので、曖昧にうなずいておく。
健ちゃんは子供の頃、弟のような存在だった。
四人でかけっこをすると、ひとりだけ転んで、よく泣いていたっけ。