酢飯も具も、多めに作っておいてよかった。

 ほっと安堵の息を吐く。

「どうしてお前まで来るんだよ。来るなら来るで、一報入れろよ」

「いやー、驚かせようと思ってさ」

「迷惑だ」

 裕ちゃんがどかりと椅子に座った。テーブルの上に飾った花が、微かに揺れる。

「いいじゃないの、健太郎だって家族なんだから」

「そうだそうだ。わーうまそー」

 義両親たちは裕ちゃんの態度を気にせず、リラックスして席に着く。

 私だけがハラハラする中、昼食会は始まった。

「この煮物、美味しいな」

 お義父さんに褒められ、お礼を言った直後。

「酢飯は少し甘いけどね」

 お義母さんの攻撃がチクリと頬を刺す。

「精進します」

 文句言いながら、バクバク食べてるじゃん。

 というセリフは飲みこみ、ひたすら愛想笑いをする。

 それを横目で見つつ、裕ちゃんが器用にオーブンから出したチキンを取り分けてくれた。

「そこは羅良ちゃんはやらないの?」

 健ちゃんのツッコミにドキッとする間もなく、裕ちゃんが返す。

「火傷させたくないからな」

「へーかっこいいー」

 本音かどうかはわからないけど、思わず赤面してしまった。