テレビをつけるわけにもいかず、水を飲んで緊張を和らげようとしていると。
玄関が開く音がして、びくっと手が震えた。
コップを放り投げるように置き、玄関まで走って出ていく。
「よ、ようこそおいでくださいました!」
裕ちゃんのあとに続き、義両親が現れる。
「こんにちは、羅良さん。これ、お土産よ」
「わあ、ありがとうございます。ありがたく頂戴します」
「まあそう硬くならずに」
電話の時は怒っていたという義両親だったけど、私たちがおとなしく従ったからか、単に外面がいいのか、にこやかに家に上がってきた。
ふと裕ちゃんを見ると、珍しく渋い顔をしている。
「あの……」
私、何か失敗しちゃったかな。
窺うように見ると、裕ちゃんの後ろから突然新たな人影が飛び出した。
「ヤッホー羅良ちゃん! 俺も来ちゃった!」
「え……健ちゃん!?」
現れたのは、色白で茶髪の男性。
チャラそうな雰囲気が全身から出ている彼は、星野健太郎。裕ちゃんの弟だ。
私より二つ年下だから、今二十四歳。
結婚式では忙しくて、あまり話す時間がなかった。
「健ちゃんも来るなんて」
聞いてなかった。私は慌ててキッチンに戻り、ちらしずし用のお皿を出す。



