スーパーの中で焼いているパンは、ふかふかでいいにおいがしている。
小麦を摂りすぎない方がいいことはアスリートの常識だけど、引退してから全然誘惑に勝てなくなった。
惣菜パンと甘いパンを合計4つ、紙トレーに入れてある。
「これ、今日のランチ用」
「いいチョイスだ。早く帰って食べないと」
裕ちゃんが押しているカートを見ると、カゴの中には山盛りの食材が。
この中のものを、彼がどう料理するかを想像すると、わくわくしてくる。
ふたりなら、料理も悪くないなと思える自分に、内心驚いた。
帰宅後、裕ちゃんが食材を手早く収納し、私はパンをお皿に出してコーヒーを淹れた。
コーヒーくらい淹れられるもん。裕ちゃんちにボタンを押すだけのコーヒーメーカーがあってよかった。
「スーパーでおばさんたちに見られてたの、気づいた?」
あっという間にサラダを用意してくれた裕ちゃんに話しかける。
「そうだっけ?」
何も気にしていない様子でパンを齧る。そんな姿さえ絵になるから不思議。
「そうだよ。ジャージにキャップな私が場違いだったのかな」



