「ううん。じゃあ、お義母さんの好きそうなお菓子を探してくるわねっ、あなた」
語尾にハートマークを付けると、裕ちゃんが目をぱちくりした。
「インフルうつったかな?」
ぺろんと前髪をめくっておでこをくっつけてくるから、今度はこっちがドキッとしてしまう。
「違うし。周りに対する夫婦アピールだし」
ぼそっと呟くと、裕ちゃんは納得したようにうなずいた。
「なるほど。それは大事だな」
私はゆっくり彼から離れ、大股でお菓子コーナーに歩く。
輸入菓子の棚に挟まれたところで、ぐったりと柱にもたれかかった。
「ああいうこと、自然にするんだもんなあ……」
男性経験のない私には、刺激が強すぎる。
部活ばかりだった私は、社会人になっても彼氏はできなかった。
社長の娘だからと遠慮されたのか、単に私に魅力がないのか、それはもう考えたくない。
「ふふん。でもいいや」
遠巻きに私たちを見ていた奥様たちが、悔しそうに顔に皺を寄せるのを、私の動体視力は見逃さなかった。
興味本位で人の旦那を盗み見たりするからよ。
って、私の旦那様じゃなかったか……。
気を取り直し、サツマイモでできた、自然の甘みを生かした和菓子と、焼き立てパンを選んで裕ちゃんと合流した。



