「どうしよう、裕ちゃん。私たち、羅良がどこに行ったのか見当もつかないの」
双子だからって、漫画のようにテレパシーが使えるわけでもない。
羅良はたしかに、昨夜まで完全無欠の社長令嬢だったのだ。
昨夜は懐かしい話に目を細めていた。
今まで、裕ちゃんに対する愚痴も、新生活に対する不安も、一切口にしなかったし、感じさせなかった。
家出する可能性なんて、爪の先ほども感じなかった。
『俺にもさっぱり見当がつかない』
「心当たりを探してみてくれる? 私も外を探しに行くから」
『ああ、わかった。とりあえず、羅良が残した書置きを写真に撮って送ってくれ』
「あ……うん」
結婚式前日に花嫁に逃げられるなんて……彼の気持ちを想像すると、本当に申し訳なくなる。 躊躇しながらも、私は裕ちゃんの言う通りにした。
裕ちゃんは傷ついた素振りを感じさせず、「ありがとう。じゃあ、またあとで連絡する」とだけ言い、電話は切れた。
「どこに行ったのよ、もう!」
羅良が裕ちゃんを傷つけるようなことをするとは、今まで考えもしなかった。
彼らは高校生の時にフィアンセとなり、同時にお付き合いを始め、今まで何の波風も立たずに続いてきたのだ。
「とにかく、まだそれほど遠くに行っていないはずだ。探偵社に連絡を取って、すぐに羅良を探そう」
父の指示で、羅良探しが始まった。



