なんとなく、男の人の「家事を一緒にやる」は「ちょっと手伝う」のイメージだった。率先してやってくれるわけがないと思っていた。
大企業の副社長で料理がうまい旦那様か。
世の女の子が涎を流しながら欲しがる……いや、涙が出るくらい羨むやつじゃん。
「お願いします。私に料理を教えてください!」
思い切り頭を下げると、額がテーブルに突き刺さる勢いで衝突した。
「うぐあっ」
「あーあ、何やってんだよ。大昔のコントか」
顔を上げた私の額に、裕ちゃんがふうふうと息を吹きかける。
「はい、痛いの飛んでったな」
うわあ、恥ずかしい。
私は手でおでこを押さえて、赤面するしかない。
「さあ、今日は忙しいぞ。気合入れていこう」
「はい!」
裕ちゃんがいれば、なんだって解決できそうな気がする。
母が来られなくなった絶望は、いつの間にか忘れていた。
大丈夫。この人と一緒なら、なんとかなる。
旦那様、黙ってついていきます!
私は急いで身支度を整える。
洗濯機のスイッチを入れて玄関に向かうと、裕ちゃんは既に小奇麗なセレブのいで立ちで、そこに立っていた。



