『いや、こっちには来ていない。何の連絡もないけど』
スピーカーモードで、裕ちゃんの声はみんなに聞こえる。期待外れの返答に、母が泣きだした。
「今朝気づいたら……家出少女みたいな書置きだけ置いて、いなくなっていて」
昨夜は、家族みんなで食事をし、アルバムを見て昔話に花を咲かせた。
双子の羅良と私は一卵性で、赤ちゃんの時はおそろいの服を着たりして、本当に可愛かった。自分で言うのもなんだけど。
途中から、スポーツ大好き娘に育った私は一年中日に焼けていて、いつもどこかに絆創膏を貼り、スポーツブランドの服に全身包まれていた。
ショートカットでまるで少年みたいな私は、どの写真も歯を見せて豪快に笑っていた。
一方羅良は、まさに良家のお嬢様といった感じ。
ひらひらフリフリのスカートやワンピースに身を包んだ色白美少女は、ピアノや茶道、華道をたしなみ、どこへ出しても恥ずかしくない女性に育った。
だから、裕ちゃんや彼のご両親が、私じゃなくて羅良を許嫁に選んだのは、至極当然のことで……って、今そんな昔のことを思い出している場合じゃない。
『いなくなった?』
低い声が、一層低くなる。
私は十分ほど前の出来事を全部、正直に話した。



