「母にえらい剣幕で怒られた。新居に両親を招くのは当たり前なのに、どうしていつまでも何も言って来ないんだって」
「ひいいい……」
もう縮み上がるしかできない。
まだ新居のお披露目をしてなかったなんて。それをご両親が強要してくるキャラだなんて、聞いてない。聞いてないよ!
他人として付き合っているときは、おっとりしたいい感じのご夫妻だと思っていたのに。
親族になった途端、めんどくせ~。
「じゃじゃじゃ、あの、出前頼まなきゃ」
お寿司でも中華でもなんでも、出前ができる時代だ。
料理下手な私は、すぐに他人に頼ろうとした。しかし。
「いや、家に招かれたら、手料理でもてなすのが普通だと思っているひとたちだからな。いくらうまいものでも、買ってきた物はすぐに見抜く。そして、少しも箸をつけないんだ」
「ななななんでぇ。嘘だって言ってぇ」
出前だって、テイクアウトだって、美味しければいいじゃん。
それ完全に、嫁の家事力を計ろうって魂胆だよね。私、そんなのゼロだよ。むしろマイナスだよ。
「シェフを……シェフを呼ぼう!」
「そこまで大げさにすることない」
「だって私、ムリだよう!」
自分の食事も用意したことないのに、いきなりおもてなし料理だなんて。
「俺も手伝う。大丈夫、お前はひとりじゃない」
手を握りなおして歩き出す裕ちゃん。引きずられる私。
無駄にカッコイイセリフと、あまりに恐ろしい状況に、戦地に向かう映画俳優の気分になった。



