そう、明日の日曜日は羅良の結婚式当日。
当然、招待状は発送済み。式場もドレスも司会者も押さえてある。
羅良の相手は、とある巨大グループ企業の御曹司。
父が社長を務めるうちの会社の取引先で、絶対に頭が上がらない相手のご子息だ。
小さい頃から家族ぐるみのお付き合いがあったので、私もよく知っている。幼なじみと言っても過言ではない。
「うちの都合で結婚式がキャンセルなんてことになったら……」
今にも嘔吐しそうな顔で、父が少なくなってきた頭髪をなでた。
「裕ちゃんに連絡してみよう。もしかしたら、裕ちゃんのところにいるかもしれない。ただのイタズラかも」
裕ちゃんこと星野裕典は、羅良のフィアンセ。
彼は実家ではなく、新居として買ったマンションに一足先に引っ越している。
羅良の失踪がお茶目なイタズラである──という一縷の望みにかけ、裕ちゃんに電話をかけた。
『もしもし』
低い声が聞こえる。
「おはよう、裕ちゃん。希樹だよ。突然だけど、羅良ってそっちに行ってる?」
単刀直入に切り出す私を、両親がハラハラした顔で見守っている。
下手にごまかしたって仕方ない。明日の結婚式を待たず、新婦がいなくなった。これはれっきとした事実で、変えようがない。



