『希樹、大丈夫だった!?』
羅良は私の全身をチェックし、暴力を振るわれていないことを確認すると、ホッと息を吐く。
『希樹がお姉様たちに連れられていったって、あなたのクラスのお友達が教えてくれたの』
『そう……だったんだ』
颯爽と助けにきてくれた裕ちゃんにときめいていた私は、盛大にがっかりした。
彼は、自分の意志で助けにきたんじゃない。羅良に頼まれ、足を運んだだけだったんだ。
私は裕ちゃんにとって、ただの妹みたいなものだから……。
胸が針で刺されたように、鋭く痛んだ。
『希樹? 大丈夫? やっぱり怖かったのね』
私を抱きしめる羅良の全身から、花のいい香りがした。
彼女の肩越しに、裕ちゃんが見えた。
裕ちゃんは目を細め、私たちを……ううん、たぶん羅良のことを、黙って見守っていた。
それから何か月かしたある日、羅良は私に言った。
『裕ちゃんと付き合ってもいいかな』
と。
私はカラカラの喉で、答える。
『そんなの、いいに決まっているじゃない。っていうか、私が決めることじゃないし』
翌日からふたりは、校内公認カップルとなった。
完全無欠のお嬢様、羅良にいちゃもんをつける女子は、いなかった。



