極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~


 ノーメイクの顔を隠すため、適当なキャップを被ってきた私を見て、裕ちゃんはふきだす。

「お前はスポ少の保護者か」

「そうそう、今日は当番で……って違うし!」

 たしかにリュックもキャップも無骨なスポーツブランドだけど、許してほしい。私は長年、このスタイルで生きてきたんだもの。

 まあ、仕事に行くときは無難なシャツとパンツだったけどさ。

「はは。羅良としてはどうかと思うけど、お前にはよく似合ってるよ。嫌いじゃない」

 笑った裕ちゃんが、すっと自然に私の手をとるから、心臓が止まりそうになった。

「あ、あの、手……」

「ん? だって俺たち、夫婦だろ?」

 恥ずかしいからやめてほしいのだけど、裕ちゃんの笑顔が抗議を封じる。

「じゃあ、お義母さん。いつでも遊びに来てくださいね」

「はい。ふつつかな娘ですが、よろしくお願いいたします!」

 玄関を出る瞬間、母が深く頭を下げるから、思わず目頭が熱くなる。

 恥ずかしかったり、泣きそうになったり、心がこんなに忙しいのは、生まれて初めてだ。

「本当に結婚するわけじゃないのに、みんな大げさだよ」

 涙目を見られないよう、くるりと母に背を向けた。

 油断したら、「今まで育ててくれてありがとう」とでも口走ってしまいそうな雰囲気だった。