「こんにちは、お義母さん。どうぞおかまいなく。僕は彼女を迎えにきただけですので」
裕ちゃんは、寝間着姿の母に微笑み、手土産と見られる紙袋を差し出した。
「まあ、ご丁寧に……こんな格好でごめんなさい」
今さら自分の失態に気づいたのか、母は受け取った紙袋で服を隠す。
「服を隠したって、ノーメイクの顔は隠れてないから」
「それはお前も一緒だろ」
母を茶化した私に、裕ちゃんがぼそっと呟く。
はっとして自分の姿を顧みると、ノーメイクにTシャツ、下は細いジャージ……いわゆるおしゃれジャージだけど、セレブの嫁として相応しいとはとても言えない。
「だって、今日は動かなきゃいけなかったから」
急に恥ずかしくなって、言い訳した。そんな私の頭をなで、裕ちゃんは母に頭を下げる。
「大事なお嬢さんをお預かりします」
それは、本当に夫になる人のセリフのようだった。
真摯な瞳で母を見つめていた裕ちゃんは、背を伸ばすと私に指示する。
「さあ、俺たちの新居に向かおう。荷物はあとから追いかけて来ればいい」
「えっと、あ、はい!」
私は急いで二階に駆け上がり、貴重品だけ入ったリュックを背負って玄関に戻った。



