「その長瀬さんが、同じようなことを言っていたんだ。他の秘書のコロンの匂いがダメとか、トイレの芳香剤を無香料にしたいとか。無性にフライドポテトが食べたくなって、昼休憩にファストフード店まで走ったとか」
「妊婦さんが走っちゃダメでしょ」
「気になるところはそこか。そうじゃないだろ」
頭の中で、裕ちゃんの言ったことを反芻する。
急に、強い匂いのするものがダメになり、油っこいものが欲しくなった。
それ、すなわち……。
「まさか」
自分の生理周期を考えてみる。
前に生理が来たのは、いつだったっけ……。
「帰るぞ!」
何もオーダーしていないのに、裕ちゃんが立ち上がった。
「ひええっ、どうして」
「どうして、じゃない。ゆっくり飯を食っている場合か!」
裕ちゃんは店員さんに謝り、店を出ることにしてしまった。
手を引かれた私は、周りの客の目線を気にしつつ、鼻を押さえて店から退出するしかなかった。



