「だからあいつ、意味不明な電話してきたのか」
裕ちゃんの額に皺が寄る。
「あの……迷惑だった?」
おそるおそる尋ねると、裕ちゃんは床にバッグを投げ捨て、両手を伸ばした。
「そんなわけないだろ」
ぎゅっと抱きしめられる。
ああ、裕ちゃんのにおいだ。
いつの間にか、このにおいに抱かれていないと眠れない体になっていた。
「裕ちゃん、裕ちゃんの好きなひとって……」
「お前に決まってるだろ。そんなの、聞かなくてもわかれよ」
すがりつくように抱きしめてくる裕ちゃんの背中をなでる。
胸の中で歓喜が開けたての炭酸みたいに弾けた。
信じられないけど、裕ちゃんが、私のことを好きだって。
「わからなかったんだもん……」
だって私は、所詮羅良の身代わりなんだと思っていたから。
裕ちゃんが優しくしてくれるのは、私を羅良だと思っているからだと。
「ずっと好きだった。ずっと、ずっと」
羅良のことがあって、言うのを躊躇っているうちに、周囲がどんどん後戻りできない状況に羅良と裕ちゃんは追い込まれていった。



