『なんだよ兄貴。ひどいなあ』
健太郎は情けない声を出す。
『俺が兄貴と羅良ちゃんと共犯疑惑かけられて、めちゃくちゃ怒られたんだけど。いつの間に親父たちにバレたのさ』
「昨夜だよ。お前のことなんか知るか」
通話を切ってやろうとするが、「待って待って待って」と必死な声が呼び止める。
『親父たち、もう兄貴を希樹ちゃんに会わせないつもりだ。彼女の実家に行かないよう、あらゆる道に使用人が張り付いてる』
「なんだって?」
希樹の実家に行く道が、両親の息がかかった者たちに塞がれていると。
なんてことだ。これじゃ希樹は、茨に囲まれた塔に幽閉された、お姫様じゃないか。
「俺が実家に近づけば、すぐ両親にばれると」
『で、また修羅場になる』
「勘弁してくれよ」
昨夜の悪夢を思い出すと、頭痛がした。
希樹を傷つけないためには、このまま会わない方が賢明なのか。
『とにかく、今日はマンションに帰った方がいい。母さんを刺激しない方がいいよ』
「あまり刺激すると、何をするかわからない、か」
『その通り』
健太郎の呑気な顔を思い浮かべると、やっぱりイラついた。



