色々なものに縛られて身動きが取れなくなっていた俺は、自由な鳥のような彼女に、憧れにも似た恋心を抱いていた。
明るい日差しの中で汗を流す彼女は、他の誰よりも綺麗だった。
でも、それは口に出せなかった。
俺がほころびを出せば、羅良との関係が崩壊すると思っていたからだ。
俺の気持ちに気づいていた羅良は、何度も俺に謝った。
自分は大丈夫だから、希樹に告白してもいい、付き合えばいいと、言ってくれた。
でも、俺はそれを選ばなかった。
希樹を手に入れることは、野生動物を檻に入れるような罪悪感があった。それに、羅良は大事な友だ。彼女を守ることも、自分の使命だと思っていた。
のっそりと立ち上がり、駐車場に向かう。
車に乗り込み、ハンドルを握るが、エンジンをかけることをためらう。
どうせ、あの広いマンションには誰も待っていないのだ。
暗く寒い部屋に帰るのは辛い。
強く残った希樹の面影を、ずっと探してしまうから。
彼女を閉じ込めるには、あそこは狭すぎたのかもしれない。
「……ん?」
スマホが震えた。
もしや希樹ではないかと、慌ててポケットから取り出すが、期待外れだった。
「なんだよ。今俺は機嫌が悪い。くだらないことを言ったら、ぶち殺す」
一気に言うと、相手は怯んだように息を飲んだ。そんな音が聞こえた。



