極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~


 流れのままに讃美歌を歌い、お決まりの「病めるときも~健やかなるときも~」の新婦の質問に「はい」と答える。

 こんなに心のこもっていない誓いの言葉があるだろうか。

 複雑な心境のまま、指輪交換へ。

 サイズがあうかどうかの心配は、無用だった。結婚指輪はまるで私のためにあつらえたかのように、すっぽりとはまって落ち着いた。

 次に結婚証明書を書くように誘導され、ペンを持つ。

 私の横で、裕ちゃんがぼそりと呟いた。

「間違えるなよ、羅良」

 苗字までを書き終えていた私は、ビクッと肩を震わせた。

 危ない危ない、自分の名前を書くところだった。

 姉の名前をしっかり記入して一息つくと、日本人でくるくるくせ毛のインチキ神父がにこやかに言った。

「では、誓いのキスを」

 はいはい。お約束のあれね……って、ああー! とうとう来てしまった! わかっていたけど、避けたかった~!

 彼氏でもない人とキスする日が来るとは。親が泣くよ。いや、親のためにこんなことになったんだっけ。

 のろのろと移動した私のベールを、裕ちゃんがめくる。