まるで花が開いたように、羅良の顔じゅうが笑顔で満たされる。

 好きな人のことを語るとき、こんなに笑顔になれる人がいるだろうか。

「大好きなんだね」

 思わず零すと

「うん、大好き」

 羅良は深く頷いた。

「でも、裕ちゃんには悪いことしちゃった。裕ちゃん、好きな人がいたのに、自分の気持ちを封じ込めちゃったの。カモフラージュを続けるために」

 今まで幸福の絶頂にいた顔が、曇った。

「その好きな人への想いをこじらせちゃってるの?」

「だいぶこじらせてる。他の女の人じゃダメみたい」

「じゃあ、その人に会わせてあげないと。このままじゃ、裕ちゃん幸せになれないよ。あの強烈なお義母さんに、また勝手に結婚相手を決められちゃう」

 私は立ち上がった。

 羅良は不思議そうな顔で、私を見上げる。

「希樹はそれでいいの? 希樹は昔から、裕ちゃんのことが好きだったでしょう?」

 認めたくなかったけど、きっとそうだった。

 羅良がいなくなって、急激に距離が近づいて、くすぶっていた想いが再燃した。

 好きだよ。大好きだよ。

 でももう、私たちは終わったんだ。始まってもなかったけど。