「では新郎さん、先にチャペルの中へ」
「じゃあな、また後で」
スタッフに誘導され、裕ちゃんは先にチャペルへ向かった。
「あ、あわわ……」
昨日は悪代官のようだった裕ちゃんだけど、羅良にはいつもこんな風にしていたんだ。
ただの演技だとは思えなくて、胸が痛くなる。
こんなに愛されているのに、羅良ってば、どうして逃げたりしたの。
完全に取り乱した私を不思議そうに見るスタッフの視線に気づき、我に返る。
「人前でそういうことするなって、いつも言っているんですけど。照れちゃうから。うふふ」
「仲が良いんですね。素敵な旦那様で羨ましいです」
スタッフは悪気のない顔で微笑む。私が身代わりとは気づいていないようだ。
素敵な旦那様、か。
重いドレスを引きずり歩くうちにため息が出た。
旦那様どころか、本当は付き合ってさえいないのに。
レースでできた長袖がついた、シンプルで美しいAラインのドレスが憎い。
お色直しのドレスはふわっふわのピンクらしいけど、私ならピンクなんて絶対に選ばない。
それは全て羅良のためのものであり、私が選んだものじゃない。
あーあ、彼氏もいないのにこんな結婚式を挙げる私って、いったい何なんだろう。
チャペルの前に着くと、父が緊張した表情で待っていた。



