「ぐ……」

 ダメだ。精神的にダメージを受けている今、うまく言い返せる自信がない。

「やっぱり希樹ちゃんだね」

 黙っていると、彼はにっこり笑った。

「もう我慢しなくていいよ。俺には本当のこと言って。誰にも言わないから」

 裕ちゃんより少し高い声が、私の心の武装を解除していく。

 氷が解けるように、目頭から涙が溢れそうになった。

「私、健ちゃんにひどいことをしたり、言ったりしたのに。どうして……」

 どうして、私に優しくするの。

 裕ちゃんも、本当は羅良の方が好きなくせに、私に優しくしないで。

 もう、どうしたらいいかわからない。

「そんなの、決まっているじゃない。希樹ちゃんが好きだからだよ」

 健ちゃんがそっと手を伸ばす。

 私は自分の手をにぎられる前に、膝に置いた。

 メンタルをやられているからといって、すぐ健ちゃんに心が傾くわけじゃない。

 健ちゃんは小さなため息を吐き、手を引っ込めた。

「実は俺なりに、あなたが希樹ちゃんだって確証を得るために、羅良ちゃんの居所を調べさせたんだ」

「えっ」

「鬱で田舎に引っ込んでいるって言ったじゃない。だから、本当にそうなのかなって」

「それで……それで、羅良の居場所はわかったの?」