その日の夜。

「そういえば、この前言っていたことだけど」

 スーツの上着を脱ぎながら、裕ちゃんが言う。

「この前?」

 なんのことだかピンと来ずに首を傾げる。

 ネクタイを緩める姿、ベタだけど好きだなあ。

「ほら、仕事したいって言っていただろ」

「ああ!」

 そう言えばそう言ってたっけ。

「今はそうでもないか」

 シャツを脱いでお風呂に向かう裕ちゃんを追いかける。

「そうでもないことないよ! 一日家にいると、体がなまっちゃって」

 家事はつらいけど、マシンに頼れば体力をあまり使わないで済んでしまう。

「ちなみに俺は共働きになっても、なかなか家事に参加できないけど、いいか」

「え……できるだけ協力はしてほしい」

 素直に言うと、脱衣所で裕ちゃんは笑う。

「だよな。でも時間的に、俺が動けるのは朝のゴミ捨てと土日くらいかな」

「うん……いいや、私頑張ってみるよ」

 世間の奥様たちから見たら、とても非協力的な夫です。

 でも裕ちゃんは一企業の副社長、夜遅くなることもしばしばなので、まあ仕方ないか。

 それより、毎日目的を持って出かけることができるのが嬉しい。