漫画やアニメじゃあるまいし、いくら双子でも、それは厳しいんじゃ。
一応一卵性の私たちは、顔や体型はそっくり。
でも、羅良と私では、話し方も身のこなし方も違う。
ゲストは羅良の大学時代の友達や、職場の同僚とか、私の知らない人も多くいる。うまくいくはずがない。
「大丈夫、花嫁はほとんど、ゲストと雑談している暇なんてないの。披露宴では座ってニコニコしていればいいのよ!」
「ええ~っ。私、エンペラーホテルのお料理めっちゃ楽しみにしてたのに。花嫁になっちゃったら、食べられないじゃん」
母は恐ろしい顔で、不満を零した私の両肩をつかんで揺さぶる。
「そんなこと言っている場合じゃないでしょう! 徳井家の危機なのよ! なんのために苦労して双子を育てたと思っているのよ!」
「ひ、ひどい」
詰め寄る母の迫力に圧倒され、父に視線で助けを求める。
しかし父も情けない顔で、椅子から降り、床に額を擦り付けた。
「すまん、希樹。頼む、式だけは……!」
父に土下座されては、こちらも拒否できない。
「ちょっとお父さん」
「そう、式だけ。それが済んだら、私たちが責任を持って羅良を連れ戻しますから。どうかお許しください!」
「お母さんまでっ。いい加減にしてよ、そんなの無理に決まっているでしょ!」



