別荘生活にも慣れてきた頃になって熱を出してしまった私。




とろんとした表情で自分の部屋にいる一同を見る。




「……なんで全員いるの?」





確か昨日は高熱が出て棗が部屋まで運んでくれてそれから薬を飲んで寝ていたはず。





いつの間に入ってきたのだろうか。





「体調はどうですか?美幸さん」





いち早く無限が近寄って私に聞く。





私が答える前にひんやりとした手が額を覆った。





それは棗の手だった。





「……まだ熱い」





「熱が籠ってるの。お昼には引くから」





そう言うとそれでも心配なのか側から離れない。




「「大丈夫ー?美幸ちゃんーー」」




捨てられた犬のようにしょんぼりと私を見つめてくる双子に私は微笑んだ。




大丈夫と聞かれたら私はもちろん




「大丈夫。」




これしか返さない。自分の本当の意思なんて言ったことはない。





「違う。」




……何が?





この人は単語でしか話さないことが多い。





だから突然言われて理解できなかった。





はてなマークを頭に浮かべていると普段は無表情の棗の顔が少し怖いような気がした。





「それはお前の本心じゃない。」





しっかりと漆黒の瞳と目線が合わさる。




ドキッとまるで心の全てを見られているような気がした。





「余計なことは考えず自分の今の気持ちを言え。」





命令口調でしかし言葉には僅かながらの温かみが感じられた。





……自分の気持ち……




「………冷たい水が飲みたい。」




私がそう言うと棗は満足そうに無限とアキラは笑顔になり双子と敏次は我先にと部屋を出ていった。




「100点満点とは言えませんが、上出来ですよ」




私はその返事と彼らの笑顔が眩しくて顔が赤くなるのを隠すために顔を伏せた。




こんなにも心が温まることに私は慣れていない。







しかしこれが幸せと言うものならばそれはとてもーーーーー。