「ここなんですか?」




「うん、ここだよー」




聞きなれた声が1つ耳に届いた。




私はまどろむ意識を手繰り寄せノロノロと瞼を開ける。




そして思った以上に体に熱がこもっていることに舌打ちをした。




……ダルいな……




声の主は直ぐに顔を見せた。




私と目が合うとその可愛らしい顔が笑顔になる。




その横には初めてみる人が一緒にいた。




「……」




「ごめんね、美幸ちゃん。いつもはここまで来るのは控えてたんだけど今日は状況がちがくってさ~」と環




「……」




「はじめまして、美幸さん。貴女の話は環と斎、敏次からよく聞いています。俺の名前は團野無限。3年A組です。」




「……」




眼鏡をかけたグレーの髪に黒い瞳の彼は紳士のように敬語を使って話してきた。




しかしその雰囲気は……




「……伯?」




そう。




大好きな伯とそっくりで。




体にこもった熱で体が怠く動く気がしない私は大人しく二人の話を聞く。




「すみません伯さんじゃなくて。いつも環と斎と敏次が貴女を誘っていたようですが今日は俺が誘いに来たんです。」




「?」




顔も話し方も違う。




なのにこの男は伯と雰囲気がそっくり。




それだけで安心している私がいた。



「どうして?」



自然と声が出た。



それに一番驚いている環。



「なんで無限には話すのーー!?」



「環、少し黙っていてください。」



「はい……」



私は首を傾げた。



「どうして゛無限゛なの?」



私の質問に無限は軽く目を見開く。



そしてフッと優しく微笑んだ。



「……無限の可能性があることを忘れないためにつけられた名前ですよ」






伯に似た雰囲気の為か普通なら気にしない事が気になった。





「…無限の可能性…」







私があの場所から一歩踏み出したのも無限の可能性の1つだったのだろうか……