ザッ







微かな足音。








そして大好きになっていた声が聞こえた。







「…何があった?」







顔を上げなくても分かる。






恐らく彼はいつも通りの無表情な顔に少しだけ心配そうな表情をしている筈。






低く透き通る声で必死に探しだしたセリフを言ったのだろう。






返事をしないでいると私の隣に棗の温もりを感じた。






「……双子が心配してたぞ」






私の心が弱くなっていくのが分かった。
















甘えたい……















助けてと言いたい……








だけど言えない…………








「棗はどうして暴走族になったの?」








顔をあげずに聞く。








「………気まぐれ」







その言葉に苦笑してしまう。







「……最初はな。……段々アイツらと過ごす時間が長くなっていって総長に選ばれて…気付いたらアイツらのこと大切だと思ってた。」






目を瞑ったまま、行き慣れた倉庫を思い浮かべる。






「……いい場所だもんね」







フッと笑う気配がした。







頭の上に手が乗る。








昨日の瑠依の用な手ではなく温かくて安心のする手。









「美幸も大切だ。」